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2016.07.01 (Fri)

アザ・ブランカ(歌)

つい最近、「踊る昭和歌謡と言う本を読んだんですが、その中に

マンボ・ブームをきっかけに、五〇年代後半から六〇年代を通じて、特定の踊り方と結びついた音楽スタイルが「ニューリズム」としてほぼ毎年のように紹介され、六〇年代前半にはいくつかのリズムが一定の成功を収めている。



という一文がありました。

ざっくり纏めると、いろいろなリズムを探し集めて来てはダンスとともに紹介し、ブームを仕掛けるものだったようです。

なかには国産ラテンリズム、「ドドンパ」や「ジャジャンボ」なんていうものもあったそうで、とても興味深い本でした。


へー、昭和ってこんなだったんだ、って具合に読んでもいいかもしれません。最終的にはエグザイルや金爆につながります。

電子書籍版ならアマゾンで800円

以前のエントリー「オッケー・オッケー」でちょっと触れた生田恵子さんのバイヨン踊りも、このニューリズムの文脈で出てきたもののようです。

サンバやボサノバではなく、バイヨン!?ってその時はとても驚いたんですが、そんな背景があったんですね。


と、いうわけでアザ・ブランカです。



ぽっぽっぽー、鳩ぽっぽー



「バイヨン踊り」の原曲を書いたルイス・ゴンザーガ / Luiz Gonzaga

今回とりあげるアザ・ブランカ / Asa Branca も彼の手(Humberto Teixeiraとの共作)によるものです。

ブラジルは北東部の、セルタォン / sertão と呼ばれる乾燥地帯の歌。

セルタォンについては、拙ブログより「渇きを追って」および「ファベーラ」を参照してください。

ルイス・ゴンザーガは1912年、ペルナンブーコ州の西の端っこの生まれ。
最初は父親の名前を引き継ぐ(ジュニアになる)予定でしたが、その日がサンタ・ルシア(Santa Luzia)の日だったこと、早朝に明るく輝く流星を見たこと、また、クリスマスのある12月だったことから、ルイスと名付けられたそうです。

ルイスはLuizと綴りますが、音と綴りが光(Luz / ルース、訛りによってはルィス) を連想させるからでしょうか。


アザ・ブランカは1947年、ルイス・ゴンザーガ35歳の時の作品です。

ご尊顔






曲はこちら






英語版はこちら





本題はこちら
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Quando oiei a terra ardendo
Com a fogueira de São João
Eu perguntei a Deus do céu, ai
Por que tamanha judiação
Eu perguntei a Deus do céu, ai
Por que tamanha judiação

サン・ジョアンの火で
地面が焼け付くのをみて
神様に尋ねたよ、ああ
なんでこのような仕打ちを
神様に尋ねたよ、ああ
なんでこのような仕打ちを

Que braseiro, que fornaia
Nem um pé de prantação
Por falta d'água perdi meu gado
Morreu de sede meu alazão

まるで炭火焼き、パン焼き釜
草の根も残りゃしない
水不足で牛は死んじまった
渇きで栗毛の馬も死んじまった

Por farta d'água perdi meu gado
Morreu de sede meu alazão

水不足で牛は死んじまった
渇きで栗毛の馬も死んじまった

Inté mesmo a asa branca
Bateu asas do sertão
Então eu disse, adeus Rosinha
Guarda contigo meu coração

アザ・ブランカまでも
セルタォンから飛んでいったよ
だから俺も、さよなら愛しの野バラ
俺の心は置いていくよ

Então eu disse, adeus Rosinha
Guarda contigo meu coração

だから俺も、さよなら愛しの野バラ
俺の心は置いていくよ

Hoje longe, muitas légua
Numa triste solidão
Espero a chuva cair de novo
Pra mim voltar pro meu sertão

今、遠く、とおく離れて
悲しい孤独の中で
俺のセルタォンに帰れるように
雨がまた降ってくれるのを待つ

Espero a chuva cair de novo
Pra mim voltar pro meu sertão

俺のセルタォンに帰れるように
雨がまた降ってくれるのを待つ

Quando o verde dos teus óio
Se espaiar na prantação
Eu te asseguro não chore não, viu
Que eu voltarei, viu
Meu coração

農場に、お前の瞳のような
緑が広がってくれれば
俺はお前を守れるから、泣かないで
きっと帰るから、ねえ
俺の大切なひと

Eu te asseguro não chore não, viu
Que eu voltarei, viu
Meu coração

俺はお前を守れるから、泣かないで
きっと帰るから、ねえ
俺の大切なひと
--------------------------
訳注


サン・ジョアンの火
フォゲイラ・ヂ・サン・ジョアン / fogueira de São João

サン / São っていうのは、聖人の前につく敬称です。
サンパウロ = 聖パウロ
サンペドロ = 聖ペドロ(ペトロ)
サンジョアン = 聖ジョアン(ヨハネ)

サンペドロは雨ですが、サンジョアンと火にはどんな関係があるのか上智中南研の人に聞いたら教えてくれそうです。

カトリックの祝祭については日本語でも調べやすい。

聖ヨハネの前夜祭
さらにフェスタジュニーナ

フェスタジュニーナ / Festa Junina の名前の由来には二つ

1. 六月(ジューニョ / Junho)のお祭り(フェスタ / Festa)だから

2. ジョアンの祭り(フェスタ・ジョアニーナ / Festa Joanina)から訛った

なんですって。

ちなみに6/23は聖ジョアンイブ、翌日が聖ジョアン祭。

先月です。
なまくらなので時代をさきどりません。

それはそうと、クリスマスイブが12/24だからちょうど一年を二つに分けるかのようにお祭りがあるんですね。

リンク先にあるように、ヨーロッパなど北半球は夏至が6月の半ばなので、夏至の火祭りとサンジョアンが結びついた、ってことのようで。

それでサンジョアンの火、と言うわけです。


bater asas

Bater / バテーは、"叩く"なんですけど、もともとは「振る、振り下ろす」動きを表した単語だったのかも。

振り下ろした結果、何かに当たるかどうかは別として。

カクテルをシェイクすることもBaterで表現します。

翼(asas / アーザス)を振り下ろすから、「はばたく」
ってことなんでしょうね、きっと。


アザ・ブランカまでも
セルタォンから飛んでいったよ


アザ・ブランカ
鳥の名前です。どんな鳥なのかは想像におまかせしますが、知りたい方はこちらです。

アザ・ブランカ(鳩)

リンク先を読んでもらうとわかると思うんですが、アザ・ブランカが飛んでいってしまうのは、実は当たり前なんですよ。

でも、この歌の主人公もセルタォンを去らなければならなくなり、心情を渡りの季節を迎えたアザ・ブランカに重ねているんだと思います。

愛しの野バラ(Rosinha / ホジーニャ)を置いて一人故郷をはなれているのは、出稼ぎなのかもしれません。




雨が降れば、俺も帰れる。



天気なんて、自分の力でどうにもならない物に希望を見いだして辛抱する姿を唄った姿が、共感を呼んだのかも知れないですね。


で、この後、故郷に帰れたのかどうかも、愛しの野バラとどうするのかにも答えがでていて。

ルイス・ゴンザーガには「アザ・ブランカの帰還」という曲があるんですな。

長くなるんで、音源と翻訳だけ載せます。




A Volta da Asa Branca

Já faz três noites
Que pro norte relampeia
A asa branca
Ouvindo o ronco do trovão
Já bateu asas
E voltou pro meu sertão

三晩つづけて
北の空に雷光ひかる
遠雷を聞きつけて
アザ・ブランカは飛び立ち
俺のセルタォンへ帰って行った

Ai, ai eu vou me embora
Vou cuidar da plantação

ああ、俺も行こう
農場の世話をしなけりゃ

Ai, ai eu vou me embora
Vou cuidar da plantação

ああ、俺も行こう
農場の世話をしなけりゃ

A seca fez eu desertar da minha terra
Mas felizmente
Deus agora se alembrou
De mandar chuva
Pra esse sertão sofredor
Sertão das muié séria
Dos homes trabaiador

渇きが俺に砂漠にさせた俺の土地
だが幸いにも
神様は思い出して下すった
厳しいセルタォン
真面目な女と
働く男の上に
雨を降らせることを

De mandar chuva
Pra esse sertão sofredor
Sertão das muié séria
Dos homes trabaiador

厳しいセルタォン
真面目な女と
働く男の上に
雨を降らせることを

Rios correndo
As cachoeira tão zoando
Terra moiada
Mato verde, que riqueza

川は流れ
滝はざんざんと音をたて
土は湿り
森はみどり、豊さよ!

E a asa branca
A Tarde canta, que beleza
Ai, ai, o povo alegre
Mais alegre a natureza

アザ・ブランカが歌う夕暮れ
美しさよ!
ああ、あぁ、人は喜び
自然はさらに喜び

E a asa branca
A Tarde canta, que beleza
Ai, ai, o povo alegre
Mais alegre a natureza.

アザ・ブランカが歌う夕暮れ
美しさよ!
ああ、あぁ、人は喜び
自然はさらに喜び

Sentindo a chuva
Eu me recordo de Rosinha
A linda flor
Do meu sertão pernambucano

雨の気配に
俺は愛しの野バラを思う
俺らがセルタォン、
ペルナンブーコの美しい花を

E se a safra
Não atrapaiá meus pranos
Que que há, o seu vigário
Vou casar no fim do ano.

収穫高が
俺の計画を狂わせなければ
いや、どうでもいいよな司教様
年越しで結婚するよ

E se a safra
Não atrapaiá meus pranos
Que que há, o seu vigário
Vou casar no fim do ano.

収穫高が
俺の計画を狂わせなければ
いや、どうでもいいよな司教様
年越しで結婚するよ



うん、ハッピー・エンドだ。
めでたしめでたしということで、このエントリーはここまで!







ぺこ。



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