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2015.11.06 (Fri)

正)サンバの宮殿 - 後編

えんさぁぁぁ!


前回に引き続きパビリオンのお話です。


「パビリオンを"宮殿"って訳してたけど、誤訳だったかも」

から始まり

「パビリオンって、どの言語でも基本的に建物の事なのに、なんでブラジルでは旗の事を指しているんだ?」

っていうのと、

「サンバのパビリオン (Pavilhão do Samba / パビリャオン・ド・サンバ) ってどういうことだ?」


についての後編です。


サーカスみたいな大テント、庭園の休憩所、ダイヤモンドの下半分、大紋章を囲む布、HP社のノートパソコンと、様々な意味をもつパビリオンですが、ポルトガル語ではそれに加えて「旗」と言う意味があります。

スペイン語にはどうやらありません。英語にもありません。しかしフランス語にはあるそうです。(アムール先輩ありがとうございます!)

よし、フランス語!


Le terme pavillon viendrait du vieux français paveillun (xiie siècle), et du latin papilio (papillon). On désignait ainsi la tente du seigneur en campagne. L'analogie avec l'insecte viendrait de l'aspect somptueux des tentes médiévales.

https://fr.wikipedia.org/wiki/Pavillon_(architecture)


厳しい。


でも、こっちに比べればなんとかなりそうな気はする。


פביליון הוא מבנה פתוח. המונח עשוי להתייחס למבנה חופשי העומד במרחק קצר מן מבנה המגורים הראשי, אשר הופך אותו לאובייקט של הנאה
.

https://he.wikipedia.org/wiki/פביליון


wikipediaの「他の言語で閲覧」で、各言語を回ってみましたが、使われてる写真は建物ばかりで似たり寄ったり。ただ、フランス語のページでは、こんな画像を拾えました。



Pavillon du roi Louis IX - Huitième croisade

邦題あるのかな。
キャプションには「ルイ9世のパビリオン - 第8回十字軍」って書いてありました。兵士がいっぱいいるので、なにか戦争のようですが、ルイ9世はテントで伏せってますね。
第8回十字軍はルイ9世の死去によって撤退したので、その様子を描いた絵なんでしょうね。

あとこれ。



こちらは、紋章学におけるパビリオン。ルイ9世のころのブルボン家の大紋章です。

うん、紋章学も調べたら面白かった。
いろいろと解説サイトがありますが、とりあえず2つほど。

http://yayo.ciao.jp/heraldry.htm
http://dragonslair.jp/main/heraldry/


それで、エスコーラ・ヂ・サンバにもそれぞれの旗があるんですが、デザインの基本は紋章のそれを踏襲しているように見えます。


例えば、中央のメインモチーフ、左右を囲むサブモチーフ、上部の王冠、下部のリボンにかかれた文字、などなど。




えーと、パビリオンに話を戻します。



フランス語wikiで"Pavillon" には曖昧さ回避のページがあるんですが、そこから"Pavillon (marine)"に飛べます。このページで「他の言語で閲覧」を選ぶと、"Maritime flag" に飛びます。


これが、旗なんですね。


船舶がその国籍を示すために掲げる旗のことを、フランス語ではパビリオンと言うようです。

ここでいままで出てきたパビリオンの要素

・仮設の大きなテント
・戦争で遠征するときに指揮官(王)が控えるところ
・宮殿の庭などにある屋根のある休憩所

というに加えて

・船の上も、王の権力が及ぶ王国の領土である。

というのを加えると、

船に掲げる旗というのもまた、仮設の城としての役割を持っていたのではないか、という気がしてきました。


王様自身は船に乗っていなかったとおもいますが、王のおわす所であるパビリオン = 旗がほらあそこに、ということで。


もっとも、その意味がロマンス諸語でフランス語とポルトガル語に残ったのかはまだ疑問です。
偶然の一致とか、昔はスペイン語でもそうだった、という可能性もありますが、ふむ。

ブラジルとフランスって、歴史的な交流が強そう、と勝手に思っています。前々回のエントリーで触れたイザベル皇女もフランスに亡命して亡くなってるし。

ふむふむ。これはまた別の機会に。

ブラジルでも"Pavilhão Nacional(国のパビリオン)"と言えば国旗の事を指していますね。

だんだん当初の目的に近づいてきたかな。

サンバのパビリオン!

Pavilhão do Samba、パビリャオン・ド・サンバ、サンバ旗。

サンバ旗

良くも悪くも、日本でのサンバは「お馬鹿に明るいもの」を連想させるので、脳内で絵ヅラがエラい事になりますが、お間違えなきように。こっちです。



出典
http://wwwartesdesigninformatica.blogspot.jp/2012/02/minha-amada-escola-do-coracao.html?m=1


やー、きたきた。やっとブラジルきた。

リオのカーニバルにおける旗とは!?

これを書くにあたって、ポルタ・バンデイラとメストリ・サラに触れない訳にはいきません。

ポルタ・バンデイラ、Porta-Bandeira. Portaはドア、ではなく、Portar / 運ぶ、という意味から派生した接頭辞。Bandeiraは旗。直訳してしまえば旗運び。なかなか良い訳も浮かびませんが、「旗持ちの姫」ってところでしょうか。

メストリ・サラはMestre Salaと綴ります。Mestreはマスター、Salaは来客用の大部屋。

大部屋マスター、では余りに情緒がなさすぎますが、英語ではマスター・オブ・セレモニーという役職に当たるそうです。
サラ(大部屋)はお城の大広間ってことでしょうかね。

王家の催事を監督する、名誉ある現場監督。姫を守るわけだから、近衛兵みたいなものかと思ってましたが、かならずしも兵士ではないみたい。

メストリ・サラについてはこちらを参照しました。

サンバでのポルタ・バンデイラとメストリ・サラは審査員席の前で進行を止めて(サンバカーニバルは行進するもの)パフォーマンスを披露するのですが、お互いが背を向けてしまうと減点になるそうです。

へええええ。

背中合わせになる振り付けがあったりするので、二人の連携が切れない事が重視されているんだと思いますが、こんなところを見ても、二人で一つのパートなんですね。


サンバ以前のリオのカーニバルでも、旗を持つポルタ・エスタンダルチ / Porta Estandarte というパートがあったんですが、これは男性が務めていたそうです。

へぇぇ・・・。

バンデイラは一般的な、四角形の縦の部分がポールで支えられた旗。
対してエスタンダルチはこんなの。旗の上辺からつるすようなタイプの旗みたいです。



サンバ以前のカーニバルねぇ。

そういえば今年の2月にこんなの書いたな

サンバ以前のカーニバル、ハンショ / Ranchoかな、とアタりをつけて調べ物。

ビンゴー!




O desfile de um rancho carnavalesco pode ser descrito como um cortejo, com a presença de um rei e uma rainha, ao som de uma marcha-rancho, acompanhado por instrumentos de sopro e corda, ritmo mais pausado que o samba. De acordo com Câmara Cascudo, eram características típicas dos ranchos as vestimentas vistosas, sendo utilizados em seus desfiles instrumentos como o violão, a viola, o cavaquinho, o ganzá, o prato, e às vezes, a flauta. Não eram usados instrumentos de percussão. Havia os mestres, um de Harmonia, um de Canto e um de Sala, responsável pela coreografia.



"ハンショのパレードは”宮廷”と表現して差し支えないだろう。王と、女王がおり、サンバよりは穏やかなハンショ式マーチは弦楽器と管楽器で演奏されていた。カマラ・カスクードによればハンショの特徴は派手な衣装と使用された楽器にある。楽器はギター、ビオラ、カヴァキーニョ、ガンザ、シンバルと場合によってはフルートだったが、打楽器は使用されなかった。また、メストリ・ヂ・アルモニア(隊列と行進の責任者?)、メストリ・ヂ・カント(歌の責任者?)と振り付けの責任者のメストリ・ヂ・サラが居た"


宮廷と王と女王。建物としての城はパレードできないから、移動式のパビリオン=旗が必要ですね。
それか、もっとストレートに、王様がいるんだから旗印もいるよね、ってことっだのかもしれません。

しかし、メストリ・ヂ・サラってダンスの責任者だったのか。確かにマスター・オブ・セレモニーだなぁ。



Os ranchos desfilavam com porta-estandarte e mestre-sala - adaptados, posteriormente, pelas escolas de samba - que tinham que dançar e ficar atentos a qualquer movimento. Nos primórdios, a enorme rivalidade entre os ranchos podia causar numa situação humilhante, que era a de ter seu estandarte roubado por um componente de um rancho rival. Naquele tempo o mestre-sala desfilava armado de navalha para proteger o pavilhão de sua agremiação.


https://pt.m.wikipedia.org/wiki/Rancho_carnavalesco

"ハンショのパレードにはポルタ・エスタンダルチとメストリ・サラ (後にエスコーラ・ヂ・サンバに採用された) もおり、周り全ての動向に注視して踊らなければならなかった。初期のパレードではハンショ同士の激しい対抗心から屈辱を味あわされることも多かったからである。すなわち、ライバルチームの構成員にエスタンダルチを盗まれるような状態である。当時、メストリ・サラは旗(パビリャオン)とチームを守るためカミソリで武装してパレードに出場していた。"


なるほど。


「メストリはバンデイラを守る」っていうのはなんと言うかこう観念的なものかと思っていたけれど、文字通りそういう意味だったのか。


ハンショの主な構成員はリオの中流階級の人だったそうです。
ファベーラの人たちがハンショのやってることをみて取り込んだ。

ハンショが王侯貴族を真似して遊んでいるのを見たファベーラの人たちが、じゃあ俺たちもカーニバルで何かやろうよ、と参考にしたら結果的にエスコーラ・ヂ・サンバになった、というところでしょうか。


ふむふむふむ、これもまた別の機会に。


1888年がブラジルの奴隷制廃止、リオでのハンショの始まりがその五年後の1893年、Deixa Falar / デイシャ・ファラーの創立が1928年とされています。エスコーラも突然うまれたわけではないでしょうから、奴隷制廃止からの40年間で徐々に下地ができていったんでしょうね。


まとめ!

パビリオン→蝶々みたいなシルエットの大きなテント→遠征中の王様がいるところ→臨時の城→船の旗→ハンショの旗→エスコーラ・ヂ・サンバの旗

「パビリオン = 宮殿って間違いでは?」と思ったのがこの前後編の動機でしたが、

あながち間違いでもなかった!



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上述した以外で参考にしたサイト
・船の上で適用される法律について(鹿児島海上自衛隊のページ)
http://www.mod.go.jp/pco/kagoshima/kachihon/mini/kaijimini4.html

・大航海時代について
http://www.geocities.jp/timeway/kougi-54.html
金岡新(浅野典夫)先生のページ。このサイトも面白い。

その他雑感
・サンバのパビリオンというのは、もしかしたらポルタ・バンデイラのスカートがテントっぽいからだったり、、、しないかな。

・パビリオンについての各国wiki巡りでは、ロシア語のページの記述量が一番多かった。

https://ru.wikipedia.org/wiki/Павильон

一行たりとも読めなかったけど。





ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。
パビリオンに詳しくなりました。

ぁぁー!







ぺこ。
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