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2016.06.16 (Thu)

水彩画

前回書いた"エモウドゥラーダ / Emoldurada "に引き続き、絵画繋がりってことでブラジルの水彩画。

ブラジルの水彩画、と邦題のある曲は二つ。

ひとつはアクアレラ・ド・ブラジル / Aquarela do Brasil

そしてアクアレラ・ブラジレイラ / Aquarela Brasileira

意味の違いは「水彩画 オブ ブラジル」と「ブラジリアン水彩画」程度です。

前者はアリ・バホーゾ / Ary Barrosoの曲
後者はシーラス・ヂ・オリベイラ / Silas de Oliveira の曲

以下のように、曲は全然違います。

前者はラララヤラララララヤラララララヤララヤーラ
後者はラーラララヤー、ラーラララヤー


今、崩壊するゲシュタルト。


はい、えー、しかし、両者ともブラジル素晴らしいよね、という点で同じです。好きなものは好きといえる気持ち抱きしめてます。

そして、両者ともサンバを代表する名曲として知られています。

1942年にディズニーの「ラテン・アメリカの旅」に採用された、ド・ブラジルの方が、世界的にみてブラジレイラより有名(と言うか元祖)なんですが、アブレウ姐さんが久しぶりに新譜を出しましたんでね。


今回取り上げるのは、ブラジレイラの方。


東京五輪の半年ほど前、1964年リオのカーニバルで演奏された曲です。

演奏したチームは古豪インペリオ・セハーノ。


歌詞の大元になるシノプス・ヂ・エンヘードの本文をさがしたんですが、見つからず。

いつもおなじみwikipediaによれば、この曲はド・ブラジルへの敬意を表するために書かれたと言うことですから、テーマ自体もアクアレラ・ド・ブラジルだったのでしょう。

しかしながら、まさにパレードが始まらんとしていた1964年2月9日の夜、作曲家アリ・バホーゾの訃報がインペリオ・セハーノにもたらされました。
その報せにエスコーラの面々は意気消沈し4位におわったのだ、という逸話があります。


そんなインペリオ・セハーノの生んだサンバの至宝ですが、僕にとってのアクアレラ・ブラジレイラ(とエ・オージ)はアブレウ姐さんなんですよシース!

フェルナンダ・アブレウ元気だったー!

曲はこちら!




収録アルバムはハーイオ・シース

邦題シース!

とっちらかったので本題!

-----------------------

Vejam essa maravilha de cenário:
É um episódio relicário,
Que o artista, num sonho genial
Escolheu para este carnaval

見たまえよこの素晴らしき風景
聖者の遺した挿話を
芸術家が人並み外れた夢を見て
この祝祭に選んだものだ

E o asfalto como passarela
Será a tela do Brasil em forma de aquarela

そしてパッサレラのアスファルトは
ブラジルを映す水彩紙になるだろう

Passeando pelas cercanias do Amazonas
Conheci vastos seringais

アマゾナスをまわり
広大なゴムの森を知る

No Pará, a ilha de Marajó
E a velha cabana do Timbó.

パラーにはマラジョー島
今は朽ちたチンボーの隠れ家

Caminhando ainda um pouco mais
Deparei com lindos coqueirais.

もう少し脚を伸ばせば
不意に出会うココ椰子の林

Estava no Ceará, terra de irapuã,
De Iracema e Tupã

セアラー。イラプアーの
イラセマの、そしてトゥパーの地

Fiquei radiante de alegria
Quando cheguei na Bahia...
Bahia de Castro Alves, do acarajé,
Das noites de magia do Candomblé.

バイーアに着いて
私は喜びの発信機になった
カストロ・アウヴィスとアカラジェ
魔法の夜とカンドンブレのバイーア

Depois de atravessar as matas do Ipu
Assisti em Pernambuco
A festa do frevo e do maracatu.

イプーの森を抜ければペルナンブーコ
フレヴォとマラカトゥのペルナンブーコ

Brasília tem o seu destaque
Na arte, na beleza, arquitetura.

ブラジリアにも特徴はある
美術に、美に、建築に

Feitiço de garoa pela serra!
São Paulo engrandece a nossa terra!

山なみに降る霧雨の魔法
サンパウロが我らが国を大きくする

Do leste, por todo o Centro-Oeste,
Tudo é belo e tem lindo matiz.

東から中西部まで
何もかも美しくグラデーションを描く

No Rio dos sambas e batucadas,
Dos malandros e mulatas
De requebros febris.

リオ。サンバとバトゥカーダの
マランドロとムラータの
熱く躍動する腰つきのリオ

Brasil, essas nossas verdes matas,
Cachoeiras e cascatas de colorido sutil
E este lindo céu azul de anil
Emoldura em aquarela o meu Brasil.

ブラジル、その青々とした森林
微細な色合いの滝と瀑布
そしてこの藍より青き空を
我がブラジルよ、水彩に切り取ってくれ

-----------------------

パッサレラ
前回のエントリーの訳注をご覧ください。
ただし、1964年の会場は現在と違うので、また別のパッサレラです。




さて、ここでブラジルの地図を拝借。
画像をタップ or クリックで出典の大きな地図が見られます。






アマゾナス / Amazonas

アマゾナスは北西の方の大きな州。
言わずと知れたアマゾンの大密林(の一部)。アマゾンといえば、現実世界でも仮想世界でも謎の生物が見つかることで有名です。

歌詞のなかで取り上げられたのは天然ゴム。当初はアマゾン川流域でしか採っておらず、「黒いダイヤ」とまでいわれていました。(出典: ゴムナビ

パラー / Pará
アマゾナス州の東の隣。「さようならだパラー州ベレン」のパラーです。

そのパラー州ベレンからみて河を挟んだ対岸にある島がマラジョー島 / Ilha de Marajó

そこにチンボー/ Timbóという呪術師がすんでいたという言い伝えがあります。
カバーナ / cabanaというのは、田舎っぽい小屋。

チンボーが何者なのか、「これだ!」という資料がみつけられませんでしたが、ファロッファカリオカの曲にそのものずばりTimbóというのがありました。

ざっくり訳すとこんな感じです。

チンボーは偉大な呪術師だった
アフリカの地からブラジルの森へやってきた
マラジョー島でそだち
ルアンダの夜には皆チンボーの話に
耳を傾けた

マラジョー島からバトゥケジェを以て
オローをアクルバンデーに贈ったものだった

ある日チンボーは死に
その血から黒いチューリップが咲いた


よくわからない単語もありますが、何となく雰囲気はわかった気がする。


セアラー / Ceará
パラーからさらに東へ。なんか二つほど州を飛ばしてますが、お気になさらずに。

たぶん、ココ椰子の林のあたりで途中のマラニャオンとピアウィー(MaranhãoとPiaui)に触れているんじゃないかと思います。

さて、イラプアー、イラセマ、トゥパーってなんだろうね。

イラセマ / Iracema はすぐわかった。1865年に書かれた文学作品。もともとは Iracema - Lenda do Ceará (イラセマ、セアラーの伝説)ってタイトルだったみたいです。

作者はジョゼ・デ・アレンカール / José de Alencar

先住民タバジャラ族の娘イラセマと、白人の戦士マーチンのロマンスを書いた作品で、ブラジル国内では絵画や彫刻のモチーフとして扱われる事もあるそうです。

セアラー州の州都フォルタレーザにはこんな彫像も。



その登場人物にイラセマに恋をしているイラプアーという戦士がいるんですが、脇役なんですよねー。なんかしっくりこない。

イラプアーというのは、トゥピ・グアラニー語(先住民の言語)で針のない
蜂のことですが、ブラジル全土で見られる蜂なので、セアラー州に特別ゆかりがあるわけではなさそう。

文学作品のイラセマがセアラー州のシンボルになってることから、ここで先住民の要素を盛り込んだ、というのが比較的しっくりくる解釈かなー。

トゥパーは、トゥピ・グアラニー語で雷鳴のこと。

英語版のwikiの項目だと
「グアラニ族の神話における神の名前である」

とあるのに対して、ポルトガル語版では

「(トゥパーは)正確には神の名前ではなく、雷鳴の形で信託を伝える存在である」

としています。

さらに、先住民たちが祈りを捧げていたのはNhanderuvuçuであるとも。

Nhanderuvuçu

読みは・・・ニャンデルヴスー?

他の呼ばれ方で、こういうのもありました。

Nhamandú, Yamandú ou Nhandejar(ニャマンドゥー、ヤマンドゥー、ニャンデジャー)

ニャマンドゥー可愛いな。


最後に、セアラー州のCearáは、
cemo / セモ、高らかに歌う
ara / アラ、小ぶりなオウム
から来ているといわれています。

ブラジルの地名はトゥピ・グアラニー語起源のものがとても多いので、調べてみると面白いですよ。

バイーア

カンドンブレは黒人奴隷がもたらしたブラジルの宗教です。サンバと切っても切れない関係にあるので、このブログでもよく出て来ます。

バラと緑についてかないのは」の訳注(Orixa / オリシャ)や、「オルフェは再び」のペドラ・ヂ・サウ / Pedra de Sal、「乾きを追って」のサン・ペドロ / São Pedroの項目も参照してください。


カストロ・アウヴィスとアカラジェ

エミーリオじゃないけど、一度アカラジェ食べてみたいんだよねー。表向きの意味で。

アカラジェについては、たとえばポケブラスのこちらの記事を読んでみてください。

http://colunas.pokebras.jp/e62074.html

カストロ・アウヴィスは、実は今回初めて聞く名前です。

昨日までカスロ・アウヴィスだとおもってました。(それだと "アウヴィス城")

バイーア産まれの詩人で、奴隷たちの詩人 / Poeta dos Escravosとも呼ばれたそうです。


彼の詩を読んだことは無いとおもっていましたが、カエターノ・ヴェローゾのアルバム、リーヴロ / Livroの9曲目が、彼の詩の引用でした。

ナヴィオ・ネグレイロ / Navio Negreiro(奴隷船)という詩です。

詩といっても短編ぐらいの長さがあるのでまださわりのところしか読めてませんが、興味のある方はこちらで読めます。

http://www.estudopratico.com.br/resumo-do-livro-o-navio-negreiro-de-castro-alves/

カエターノの音源はこちら

ペルナンブーコ
アマゾナス州から始まって東まわりでリオへと南下していましたが、ここで一つ北へ戻る。

Pernambuco, トゥピ・グアラニー語で「海の穴」を意味するパラナープカ / Paranãpukaから来ている名前です。

ところでお客様にバイオリンを弾く方はいらっしゃいませんか?

フェルナンブーコという木材。
弦楽器の弓に使われる高級木材で、綴りはPhernambuco.

ペルナンブーコから多く産出されたため、この名前で呼ばれています。そのまま、「ペルナンブーコ」と呼ばれることもあります。

ところで、その原木からは熾火のような赤い染料が取れるんですな。

熾火はポルトガル語で ブラーザ/ Brasa

熾火のような、と形容詞化してBrasil

ブラジル。

ブラジルの国名の由来となった木、パウ・ブラジルの心材がフェルナンブーコです。

現在、パウ・ブラジルは絶滅危惧種。

いやー、勉強になりますね!


イプーの森についてはわかりませんでした。
セアラー州にはイプーという町があるんですが、その周辺の森を抜けてもまだセアラー州。

"イプー ペルナンブーコ" (Ipu Pernambuco) でgoogle mapを検索したらペルナンブーコにある石膏工場が見つかりました。
絶対これじゃない。

イプーの森って何でしょう。教えて鈴木先生!


マラカトゥについては、「バッキバがバキバキやってる音楽」と以前に紹介しました。ズンビーありがとう!の訳注です。

マラカトゥと名前が付く音楽には
フラウとナサォン(RuralとNação)の二種類あって、リズムや登場人物が違っているそうです。

youtube 検索するなら このスペル

maracatu rural (フラウ)
maracatu nação (ナサォン)

フレーヴォ / Frevo は、ペルナンブーコの州都ヘシーフィ/ Recifeでのカーニバルで演奏し踊られる音楽文化のこと。

浮遊するように踊るリオのサンバ
地面からのバウンドを楽しむようなパリンチンスのボイブンバ
軽やかに跳ね回るヘシーフィのフレーヴォ

こういうの。















ふー

北東部までおわってキリがいいので、ちょっと休憩。

曲はアラゴアス州マセイオー出身の歌手、ジャヴァンの歌で
フロー・ヂ・リス / Flor de Lis (ユリの花)をお届けします。














はい、再開。

ブラジリア

1964年当時、できたばかりのブラジリア。
オスカー・ニーマイヤーデザインの建築がならぶ未来都市ブラジル。





歴史はないけど特徴はあるさ、ってことかしら。

僕の青春のロック、レジアォン・ウルバーナの出身地でもあります。

サンパウロ

「山なみに降る霧雨の魔法」

もとの歌詞では、山並みはセーハ / Serra

セーハはノコギリのことで、つまりノコギリみたいなギザギザな山並み。
サンパウロ州は海に面してはいますが、サントス港で上陸したらいきなり山です。

海にせまるギザギザな山がずっと続いているので、海のノコギリ(セーハ・ド・マー / Serra do Mar)と呼ばれていたりしました。



また、山沿いのサンパウロ市は霧雨(ガロア / Garoa)がよく降ったため、霧雨の地 (テハ・ダ・ガロア / Terra da Garoa)と呼ばれています。

余談ですが、「君ともっと一緒にいたいけど11時の終電で帰らないと」という男のサンバで有名なサンパウロ出身のバンドの名前が"霧雨"の悪魔(デモーニオス・ダ・ガロア)だったりもします。


そのサンパウロ市、南米最大の都市でブラジル経済の中心地なんですが、「サンパウロが国を大きくする」のは経済の観点だけではないようです。

合衆国の西部開拓とちょっと似てますが、ブラジルにも17世紀にバンデイランテスという奥地探検隊が西へ西へと進んでいく歴史がありました。

その探検隊の拠点となったのがサンパウロ市でした。

バンデイランテスのやったことそのものは、今の価値観からしてかなり野蛮な行為ですが、ブラジルの国土が西へ広がるきっかけとなったのも彼らでした。

サンパウロから国が大きくなったんですね。

東から中西部まで

ざっくりきましたね。

リオ
そしてついにリオ!
なにが「ついに」かって、この訳注がですよ。

サンバとバトゥカーダはもう注釈は入れなくていいよね。


マランドロとムラータの熱く躍動する腰つき

これは見た方が早い。



マランドロのスタイルで踊る男性と
踊るムラータ(黒人と白人の混血)の女性

どちらも「リオっぽいもの」の代表格。

ショーの映像なので、歌詞中に歌われた風景とは違うものですが、マランドロとムラータの典型的な形を描いているとおもいます。

ところで、マランドロ / Malandroはジャンルやパートの名前ではなくて、江戸っ子とかモッズとかヒッピーみたいな、スタイルについた名前です。

サンバダンサーで男性であれば全部マランドロって呼ぶような風潮は、個人的にはあんまり好きじゃないっす。(理由: 自分がそうじゃないから)

でもマランドロスタイルはやっぱり格好良いのよね。

これとか(動画はジョージ先生から紹介してもらったものです。ありがとうございます)




こういうのをみると、マランドロはやっぱり生き方のスタイルだよなーと思うんです。



よし、訳注ここまで!

ここまで読んでくれた方、お疲れさまでした!
おれ、お疲れさまでした!

みなさん、これがどの曲の翻訳だったか覚えてますか?、アクアレラ・ブラジレイラです。
フェルナンダ・アブレウの新譜発表にかこつけてます。ちょっと忘れてました。

ブラジルは広く、尺の都合で言及されなかった州が幾つもあります。

しかしそこはフェルナンダ、埋め合わせをするかのような曲をすでに歌っています。

アクアレラ・ブラジレイラが収録されているアルバムの前のアルバム(ダ・ラータ / Da Lata)に「ブラジルはスイングの国(Brasil é O País Do Suingue)」という曲があって、この中では全ての州が言及されています。

あ、待って。一つだけ、言及されていない州があります。

目を皿の用にして歌詞を追いましたが、やっぱりありませんでした。

エスピリト・サントやアクレ、ホンドーニア、リオ・グランデも南北の両方に触れてるのにそりゃないだろと丹念に読みましたが、やっぱりありませんでした。

"Nobody cares about the Dakotas (ダコタなんか知るか!)"と負け惜しむモニカ・ゲラーが頭をよぎります(フレンズ、シーズン7、第8話)。


20年前のパンタナール旅行は楽しかったよ。
マトグロッソ・ド・スル州に幸あれ。 










ぺこ




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